電子署名法2条・3条のポイント解説
電子契約の普及にともない電子署名法の理解が欠かせない時代に
電子署名法を理解するためのポイント
電子署名法の全体構造
章 | 条 |
---|---|
第1章 総則 | 第1条・第2条 |
第2章 電磁的記録の真正な成立の推定 | 第3条 |
第3章 特定認証業務の認定等 | 第4条―第16条 |
第4章 指定調査機関等 | 第17条―第32条 |
第5章 雑則 | 第33条―第40条 |
第6章 罰則 | 第41条―第47条 |
電子署名法を理解するためのポイントは、ずばり、3条を正確に理解できるか にあります。
電子署名法2条が定める電子署名の要件
その3条を理解する前提として、先に 「電子署名」の要件を定義する電子署名法2条1項を確認 しておく必要があります。
第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
- 当該情報(電子データ)について行われる措置であること
- 当該情報(電子データ)が当該措置(電子署名)を行なった者が作成したものであることを表示する目的のもの
- 当該情報(電子データ)に改変がないことを確認できるもの
そこで、2020年7月17日に、当時の所管省であった総務省・法務省・経済産業省の連名による「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」が発出され、クラウド型電子署名についても電子署名法2条の電子署名の要件を満たしうるとの公式見解 が示されました(関連記事:「電子契約サービスに関するQ&A」三省連名発表の意義)。
・サービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化を行うこと等によって当該文書の成立の真正性及びその後の非改変性を担保しようとするサービスであっても、技術的・機能的に見て、サービス提供事業者の意思が介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化されたものであることが担保されていると認められる場合であれば、「当該措置を行った者」はサービス提供事業者ではなく、その利用者であると評価し得るものと考えられる。
・そして、上記サービスにおいて、例えば、サービス提供事業者に対して電子文書の送信を行った利用者やその日時等の情報を付随情報として確認することができるものになっているなど、当該電子文書に付された当該情報を含めての全体を1つの措置と捉え直すことよって、電子文書について行われた当該措置が利用者の意思に基づいていることが明らかになる場合には,これらを全体として1つの措置と捉え直すことにより、「当該措置を行った者(=当該利用者)の作成に係るものであることを示すためのものであること」という要件(電子署名法第2条第1項第1号)を満たす ことになるものと考えられる。
電子署名法2条が電子署名の要件をあえて抽象的に定めた理由
電子署名法制定後に、電磁的な意思表示の証としての固有性や非改ざん性を証明するよりよい方法が将来発見・発明される可能性を踏まえ、あえて条文をあいまいにし、技術的中立性に配慮 したというわけです。
電子署名法3条が定める推定効発生の要件
では、いよいよ 最重要条文である電子署名法3条 をみてみましょう。
- 電子文書に対して
- 本人だけが行うことができる電子署名が本人により行われていれば
- 真正に成立したものと推定する
民事訴訟法228条4項と電子署名法3条の比較
民事訴訟法228条4項と電子署名法3条の比較
こうして見ると、押印の推定効の発生条件はきわめてシンプルで、本人が押した印さえあれば、推定効を認める 条文になっています。それに対し、電子署名の推定効の発生条件は、2条電子署名の要件を満たした上で、さらに括弧書きの条件を満たした3条電子署名を措置することを要求 しています。
一般ユーザーは4条以下を読む必要なし
第二条 (略)
2 この法律において「認証業務」とは、自らが行う電子署名についてその業務を利用する者(以下「利用者」という。)その他の者の求めに応じ、当該利用者が電子署名を行ったものであることを確認するために用いられる事項が当該利用者に係るものであることを証明する業務をいう。
3 この法律において「特定認証業務」とは、電子署名のうち、その方式に応じて本人だけが行うことができるものとして主務省令で定める基準に適合するものについて行われる認証業務をいう。
ただし、これらの条文は、電子署名法4条以下は、電子認証機関を営もうとする人以外には関係がない、つまり一般ユーザーは読む必要がない条文 です。
電子署名法の解釈における注意点
法務のプロでも陥りがちな電子署名法3つの誤解
重要なポイントはたった一つ 法律のプロでも誤読しがちな電子署名法
誤解その1:2条1項の電子署名は署名者特定機能を要件としていない
結論としては、第2条1項の電子署名は、署名者特定機能を要件としていません。以下、この点について述べた高野真人・藤原宏髙『電子署名と認証制度』(第一法規,2001)P28から引用します。
- 著者: 高野真人・藤原宏髙/編著
- 出版社: 第一法規
- 出版年月: 20010910
電子署名制度の必要性は、電子署名・認証法成立以前から説かれていました。その場合に、電子署名の持つ機能として、電子データに付された電子署名から署名者が誰であるかを特定する機能、すなわち「署名者特定機能」を持つ必要性があるとされていました。なぜ契約書作成の場合に署名・押印が求められてきたかというと、署名・ 押印の存在によりその文章を誰が作成したかを判別できるからです。
ところが、電子署名・認証法2条1項の定義は、その点には何も触れていません。同項では電子署名の要件として(ウ)【編集部注:2条1項2号】の改変防止機能を要求しているのですから、このような高度な機能を持つ以上、本来は「署名者特定機能」を有するものであることが予想されることではあります。しかし、法律の構造上は、このような機能は「電子署名」であることの要件となっていません。
誤解その2:3条の推定効は認定認証を要件としていない
もう一つ重要な点であり誤解されがちな点として、電子署名法3条に定める電子文書の真正な成立の推定効を獲得するためには、必ずしも第4条以下に定める電子認証機関(認証局)による認証が必要とされているわけではない、という事実です。
勉強の基本は “国語力” がすべて。高めるコツはたったひとつ「丁寧に読む」こと
「学力向上の鍵は『国語力』向上にある」とは、多くの教育者がそろって唱えることです。理系教科を学ぶにしても、その内容を理解するためには教科書や参考書を読まなければなりません。人間が言葉を使って物事を考え理解することを思えば、その主張ももっともです。そして、脳科学者・中野信子(なかの・のぶこ)さんとの共著『「超」勉強力』(プレジデント社)を上梓した信州大学特任准教授の 山口真由(やまぐち・まゆ)さん も、「勉強の基本は『国語力』がすべて」だと言いきります。
すべての勉強の基本は国語力にあり
勉強について私が大切だと考えていること――それは、 すべての勉強の基本は「国語力」にある ということです。
ここでの国語力は、インプットのための「読解力」と、アウトプットのための「表現力」を指します。とりわけ読解力は、すべての勉強における最重要要素です。
なぜ、読解力があるとよいのでしょうか? その理由は、文章を読んだときに、「書いた人はなにが言いたいのか」「なにが問われているのか」を明確につかめるからです。
丁寧に読む 。
得意分野は「読む」「聞く」「書く」「話す」で分析する
自分の得意分野を見極めるために、私がよく使う方法を紹介します。それは、 「読む」「聞く」「書く」「話す」の4つの行動で、自分を分析する 方法です。
この4分野での評価でもはっきりしないときは、他人からの客観的な意見を聞くことで、自分では思いもしなかった得意な一面を発見できることもあるでしょう。
いずれにせよ、 結果を出すために大切なのは「自分に合ったやり方」で勉強すること に尽きます。誰にでもあてはまる勉強法はありませんが、多くの人が楽に取り組めて、結果もついてくる普遍性の高い方法は存在します。それは、私が編み出した「7回読み勉強法」です。
その方法はとてもシンプル。「同じ本を7回読む」のです。そうすれば、だいたいの内容が頭に入ります。読む時間は、1回あたり30分〜1時間程度。1〜3回目は、見出しなどを拾いながら読み流して、本の全体像をつかみます。4、5回目は、重要キーワードを意識しながら要旨をつかむ。そして、6、7回目は、内容を頭で要約しながら読む。そうすれば、本の内容を頭のなかに写し取ることができます。(参考記事:最速で結果がついてくる「7回読み」勉強法)。
網羅性の高い1冊の基本書を選ぶ
それでも、同じ箇所を繰り返し読んでいると、自然と記憶に定着していきます。むしろ、「読むこと=ページをめくること」くらいに思って、とにかく最後まで読み進めることが重要なのです。
「読む」というアプローチは、「聞く」「話す」「書く」と比べて、情報のインプットが圧倒的に速い方法です。また、「いつでもどこでも」できるのもメリットです。本1冊さえ持ち歩いていれば、移動中でもどこでも勉強ができるからです。「スキマ時間」を最大限に活かせるので、毎日の貴重な時間をほとんど無駄にしません。
ですから、読む本を選ぶときに気をつけるべきポイントは、なにより「 網羅性 」です。学ぶべきことが余すことなく書かれている、あるいは自分がそう信じることができる本を選ぶ必要があります。学生の場合は教科書でいいのですが、社会人が勉強する場合は、網羅性の高い参考書や問題集を1冊選ぶことを強く意識しましょう。
本への「愛着」が、勉強に対する意欲を持続させる
また、意外に大切なのが、 その本に「愛着」をもてるかどうか という部分。なぜなら、常に持ち歩いて何度も繰り返し読むためには、自分が気に入った本でなければ続けるのがつらくなってしまうからです。
その分野で定評のある、いわゆる定番本に縛られる必要はありません。もちろん、定番には定番たる理由があるので、慎重に内容を検討する必要はありますが、遜色がない内容・情報量であれば迷わず自分に合ったほうを選ぶべきです。
【プロフィール】
山口真由(やまぐち・まゆ)
信州大学特任准教授・法学博士・ニューヨーク州弁護士。1983 年、北海道に生まれる。東京大学を「法学部における成績優秀者」として総長賞を受け卒業。卒業後は財務省に入省し主税局に配属。2008 年に財務省を退官し、その後、2015年まで弁護士として主に企業法務を担当する。同年、ハーバード・ロースクール(LL.M.)に留学し、2016年に修了。2017年6月、ニューヨーク州弁護士登録。帰国後は東京大学大学院法学政治学研究科博士課程に進み、日米の「家族法」を研究。2020年、博士課程修了。同年、信州大学特任准教授に就任。出演中の主な番組として『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)、『ゴゴスマ』(CBCテレビ/TBSテレビ系)など。主な著書に『いいエリート、わるいエリート』(新潮社)、『思い通りに伝わるアウトプット術』(PHP研究所)などがある。
5分で分かる「働き方改革」とは?取り組みの背景と目的を解説
まず内閣府が発表している、日本の将来人口推計を確認してみましょう。
※引用: 内閣府「人口・経済・地域社会の将来像」 重要なポイントはたった一つ
労働力人口(生産年齢人口)は2060年にはピーク時の半分に
※引用:国立社会保障・人口問題研究所HP
- 平成25(2013)年には8000万人
- 令和39(2027)年には7000万人
- 令和63(2051)年には5000万人
労働力不足解消の3つの対応策
- 働き手を増やす(労働市場に参加していない女性や高齢者)
- 出生率を上げて将来の働き手を増やす
- 労働生産性を上げる
働き方改革の具体的な3つの課題
- 長時間労働の解消
- 非正規と正社員の格差是正
- 労働人口不足(高齢者の就労促進)
課題(1)長時間労働の解消
- 多くの労働者が長時間労働に従事している
- 過労死や精神的なハラスメントによる自殺が職場で発生し続けていることを懸念する
働き方改革における長時間労働の改善施策
- 法改正による時間外労働の上限規制の導入
- 勤務間インターバル制度導入に向けた環境整備
- 健康で働きやすい職場環境の整備
時間外労働の法改正:36協定の見直しがポイントに
課題(2)非正規社員と正社員との格差是正
働き方改革における非正規・正社員の格差解消の施策
- 同一労働同一賃金の実効性を確保する法制度とガイドラインの整備
- 非正規雇用労働者の正社員化などキャリアアップの推進
働き方改革の目玉「同一労働同一賃金」とは
「同一労働同一賃金」に取り組む本当の理由
課題(3)高齢者の就労促進
※引用:国立社会保障・人口問題研究所HP
働き方改革における高齢者の就労促進施策
- 継続雇用延長・定年延長の支援
- 高齢者のマッチング支援
65 歳以降の継続雇用延長や、 65 歳までの定年延長を行う企業等に対する支援が検討されています。
コロナで変わる、これからの働き方改革
変化1:テレワークの拡大
変化2:労働生産性向上がカギに
コラム:働き方改革の具体的な取り組み事例を紹介
トヨタ自動車の事例:在宅勤務の新設、女性の就労機会の促進
※参照:http://www.toyota.co.jp/
- 若手社員の賃金引き上げ:子育て世代に手厚く賃金カーブを変更
- 年功給から能力給の変更:若手以降は能力の発揮に応じて給与に差がつく
- さらに、2020年現在、以下のような働き方改革の取り組みを推進しています。
在宅勤務制度の新設
裁量労働制勤務またはフレックスタイム勤務をベースとしている職種の社員(事務員、技術員)を対象に、テレワークとしてFTL制度(Free Time and Location)を開始しています。
年次有給休暇取得の促進
仕事と育児の両立支援
女性の活躍推進と育児支援
障がい者雇用機会の拡充
花王株式会社の事例:休暇取得を1時間単位で行える仕組みの導入
※参照:http://www.kao.com/jp/
「働き方改革」何から取り組めば良い?
とお悩みの企業担当者の方へ
やるべきことが分からず、まずは今話題の残業の抑制から取り組んでみたという企業が約86%を超える中、その半数にも及ぶ、約44%の従業員が残業抑制に関する満足度を実感出来なかったと回答をしています。(※参考:LINE株式会社 livedoor 重要なポイントはたった一つ NEWS 残業削減で「収入が減った」が3割 「生産性で評価して」という声)
このようにそもそもの目的を見失い、残業を減らしたり、休みを増やしたところで、従業員の満足度が下がればその施策は無意味なものとなります。
何から始めて良いのか分からない・従業員満足度を向上させたい、とお困りの企業担当者は、まずは福利厚生アウトソーシングサービスの導入を検討してみはいかがでしょうか。
あなたの疑問に答えます(ゲノム編集の特徴は? 遺伝子組換えとどう違うの?)
ゲノム編集食品という言葉、最近よく聞かれるようになってきました。研究が進み店頭に並ぶのも近い、と言われ、行政の規制の仕組みも決まりました。でも、どういうものなのかよくわからない、という人が多いのでは?わからなければ不安を感じて当たり前です。
どんなもの? メリットがあるの? 怖いもの? 問題点は?
科学ジャーナリストがさまざまな角度から5人の専門家に疑問をぶつけました。8回にわたりお伝えします。
第1回目は、ゲノム編集技術の特徴や遺伝子組換え技術との違いについて解説します。 なお、概要は、記事の最後に3つのポイントとしてまとめています。
疑問1 ゲノム編集の特徴は? 遺伝子組換えとどう違うの?
写真左/玉川大学 奥崎文子 准教授
写真右/科学ジャーナリスト 松永和紀氏
生き物はそれぞれゲノムを持っている
松永 「ゲノム編集食品はどんなもの?」と市民からよく尋ねられます。 ゲノムという言葉は普通の生活ではなじみがなく、遺伝子組換え食品との違いがわからない、という人が多いようです。 奥崎 ゲノム編集はもともと持っている性質を改変する方法。遺伝子組換えはもともともっていない新しい性質を付け加える方法になります。 ゲノムというのは、それぞれの生物の設計図の全体のことで、遺伝情報の1セットのことを指します。
遺伝情報はDNAという化学物質に暗号化されて保存されています。具体的には、DNAを構成する4種類の塩基(A,T,G,C)の並び順によって、生物の性質や形などが指定されているのです。
DNAは2本が対になって1本となり二重らせん状になっているので、塩基が100個ならんでいれば長さは100塩基対と表します。 松永 先生、最初から専門用語が出てきて、難し過ぎますよ。一般の人たちは戸惑います。それに、生き物の設計図、とか言われると、私たちは機械とは違うのに、と思ってしまいます。
出典:農林水産省リーフレット「ゲノム編集~新しい育種技術」
二重らせん状になった長いDNA。文字で表されているところが塩基で、対になっている。ATGCの並ぶ順番(配列)が重要になる。長いDNAのところどころに、遺伝子(タンパク質を作るための遺伝情報)がある。
遺伝子組換えは外から追加、ゲノム編集は変更
松永 DNAと遺伝子の関係は? 奥崎 長いDNAのところどころに遺伝子があります。 遺伝子を基にしてタンパク質などが作られ、体の一部になったり代謝を促す酵素になったりして生命活動を担います。ヒトでは遺伝子が約2万個、イネの遺伝子数は約3万2000個と推測されています。 松永 遺伝子が個別に細胞中にふわふわ浮いているようなイメージを持っている人がいるのですが、そうではなく、長い長いDNAの一部としてつながっているのですね。では、 ゲノム編集食品と遺伝子組換え食品の違いは?
先ほど説明していただきましたが、もう少しかみくだいて教えてください。 奥崎 遺伝子組換えは、外から新たな遺伝子をゲノムに挿入する技術 重要なポイントはたった一つ です。それにより、これまで持っていなかった性質が付加されて、特定の除草剤をかけられても生き延びる作物になったり、害虫が食べるとお腹をこわすタンパク質が作られたりします。一方、 ゲノム編集の基本は、外から新たに付け加えるのではなく、働きがわかっている遺伝子を狙って切断などして、変える こと。遺伝子となっているDNAの特定の位置を切ると、たいていの場合には生物の本来の機能によって修復されますが、ごくたまに修復ミスが起きます。その結果、その特定の位置にある狙った遺伝子が変化して働かないようになったりするなど、機能が変わります。 松永 修復ミスを利用する、というのは面白い。でも、DNAの特定の位置を切る、というのは難しそう。DNAは目で見える、とか顕微鏡で見える、というようなものではありません。もっとうんと小さい。 どうやって切るのですか?
奥崎 現在は、主にCRISPR/Cas9(クリスパーキャスナイン)というものを細胞内に入れてDNAを切る仕組みが使われています。 これは2つの要素で構成されており、CRISPR(クリスパー)はゲノムの狙った位置にくっつくRNA、Cas9(キャスナイン)はその横を切るハサミの役割を果たす酵素です。細胞に入れると、ゲノムの狙った部位を上手に切ってくれます。これにより、イネであれば約3万2000個ある遺伝子のたった一つだけの機能を変える、というようなことが可能です。
生き物の進化も、遺伝子の変異から
松永 遺伝子組換えは人がゲノムに新しい遺伝子を入れ、ゲノム編集は人がゲノムを切る。違いはよくわかりました。でも、いずれにせよ、 人がゲノムを切る、いじる、という点に抵抗感を覚える人が多いようです。 「結局、遺伝子を壊すのでしょう。怖い、とんでもない。生命の冒涜です」と言われます。 奥崎 DNAが切れる、遺伝子が壊れる、というような現象自体は、自然界でごく普通にひんぱんに起きています。 自然の放射線を受けたり紫外線を浴びたり、いろいろな刺激でDNAは自然に切れます。通常、 生き物はそれをすぐ修復して元通りにしますが、ごくたまに一部の塩基が欠けてしまったり別の塩基に置き換わったり、いくつかの塩基が入ってしまったりということが起きます。 これが自然の突然変異といわれるもの。 ゲノム編集は、同じ現象をDNAの狙った部位で起こさせる方法 なんです。 松永 突然変異があるからこそ、地球上で約38億年前、最初に生まれた単細胞の生き物が進化し多様な生物となって、現在の豊かな地球になっていると聞きました。 奥崎 そうですね。私は植物が専門なので植物についてお話しすると、人は、約1万年前に農業を始めて、最初はこの自然の突然変異によって人間が利用しやすい良い性質を持つようになった植物を選抜して、栽培し始めました。100年ほど前からは、意図的におしべとめしべを掛け合わせる交配育種を始めました。
自然の変異の方がダイナミック
松永 育種というのは品種改良のこと ですね。 こうした品種改良は自然だから安心だ、と多くの人が受け止めています。 奥崎 ただ、自然に起きることの方が、遺伝的な変化はダイナミックであるともいえます。 交配という過程でも、実は、生物が自らDNAを切ったりつないだりシャッフルさせた遺伝情報を人為的にミックスして、様々な新しい組み合わせの生物を作りだしています。
松永 1920年代からは、人為的に突然変異を起こさせる品種改良も始まりました。
強い放射線を当てたり化学物質をかけたりしてDNAを切って突然変異を起こさせる。
結局、人為的にゲノムの遺伝情報を変える、というのは別に新しいことではなく、近世に入ってからは人がずっと行ってきたことですね。
出典:農林水産省リーフレット「ゲノム編集~新しい育種技術」
奥崎 ゲノム編集は、ゲノムの中の狙った位置を切る、というところがこれまでの品種改良と異なります。 もう一つ違うのは切る回数。DNAを1回切ってもすぐに元通りに修復されるのが自然界のシステムで、元通りにならず変異が起きるのは10万回に1回か100万回に1回程度の確率だとみられています。そこで、ゲノム編集技術では、狙った位置で変異が起きるまで、何回でも切っています。でも、 切った後の変異がどんなものになるかは自然にお任せ。自然の突然変異と同じように、一部の塩基が欠けたり置き換わったり、数塩基分が挿入されたり、という現象が起きます。 それにより、遺伝子の働きが変化したり壊されたりします。
ゲノム編集には大きなメリットがある
出典:農林水産省リーフレット「ゲノム編集~新しい育種技術」
奥崎 従来の方法に比べてゲノム編集は大きなメリットがあります。品種改良にかかる時間や労力がまったく違う のです。従来の品種改良だとまず、大元の優良品種のタネを交配させたり、化学物質や放射線にさらしたりして、DNAに変異を起こさせます。
その結果、いろいろな遺伝子に変化が起きていますので、その次に、狙った遺伝子が偶然変異したものを選ぶ工程に入ります。1万個体以上を育てて調べてやっと、目的の1個体を選ぶ、というような感じです。そのうえで、元の品種をさらに掛け合わせる戻し交配という作業を行って、狙った遺伝子だけが変異していてほかのところは元通りの優良品種、というものに近づけてゆきます。 松永 品種改良は大変だ、長い時間がかかる、お金がかかる、腕もいる、と研究者や種苗会社の方々が頭を悩ませていますよ。 奥崎 作物を従来の方法で品種改良すると、商用化までに短くて数年、長い場合は数十年もかかります。一方、ゲノム編集作物の場合には、1年から4年ほどで商用栽培にこぎ着けられる、と言われています。 松永 手間と時間を短縮できれば品種改良のコストを大幅に下げられて、よい品種を次々に生み出してゆける。ゲノム編集はよいことずくめの方法なんだ。
食糧危機解決、砂漠の緑地化にも貢献?
松永 奥崎先生は、どのような経緯でゲノム編集技術の研究に関わることになったのですか。 奥崎 そもそもは、大学在学中に遺伝子ターゲティングという別の方法で、ゲノムの狙った位置の塩基を置き換える、という研究をしていました。イネを材料にしていましたが、当時は1000粒のコメを材料に使ってやっと1回成功するかしないか、という感じで効率が悪く、手法の改良を試行錯誤しました。その他の研究経験も経て、現在の大学に勤め始めた頃に、CRISPR/Cas9が登場しました。CRISPR/Cas9は、イネであれば10粒も使えば1、2回成功が見込めることが既にわかっていました。 松永 CRISPR/Cas9は、2012年に米国の研究者が発表した新しい手法ですよね。 奥崎 重要なポイントはたった一つ はい。そこで、アブラナ科の作物のゲノム編集に挑戦しました。セイヨウナタネでは、300粒あれば1個といった確率でゲノム編集が成功し、2年ぐらいで市場に出せるほどのものを開発できました。私自身、狙った遺伝子を変異させるということの大変さを知っていたので、CRISPR/Cas9を使ってみてこの技術革新に驚きました。今は、ブロッコリーなどを用いてゲノム編集による品種改良の研究をしています。 松永 ずっと植物の遺伝子の改変に関わってこられた。その熱意はどこから? 奥崎 中学生ぐらいの時にバイオテクノロジーの話を聞き、良い植物ができれば食糧危機を解決できる、砂漠の緑地化などもできる、夢の技術だと憧れました。大学の農学部に入って研究を始め、遺伝子組換えも手がけました。この新しいゲノム編集技術については、品種改良のすぐれた方法として活用しない手はないと思っています。 松永 次回も奥崎先生に、多くの人が気にしているゲノム編集食品の安全性について、ご意見をおうかがいします。
今回の概要
- ・ 遺伝子組換えは、外から新たに遺伝子を挿入する技術、ゲノム編集は、その生物が持っている遺伝子を変える技術。
- ・自然の放射線や紫外線などにより、 DNAが切れ遺伝子が変異するという現象は、自然界では、ごく普通に起きている。ゲノム編集技術は、これと同じ現象をゲノムの特定の部位で起こさせる。
- ・ゲノム編集技術は、 従来の品種改良に比べ、商用化までにかかる時間やコストが大幅に下がる。
玉川大学 准教授。
東北大学大学院 応用生命科学専攻にて博士(農学)を取得(2007年)。日本学術振興会特別研究員(DC2、東北大院)、農業生物資源研究所 特別研究員、日本学術振興会海外特別研究員(フンボルト大学)を経て2015年から現職。植物の遺伝子組換え、葉緑体形質転換技術の改良や遺伝子機能解析に携わってきた。現在はアブラナ科植物のゲノム編集を中心にバイテク技術を利用した植物育種に取り組んでいる。
科学ジャーナリスト。
1989年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。食品の安全性や生産技術、環境影響等を主な専門領域として、執筆や講演活動などを続けている。『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞受賞。ほかに『効かない健康食品 危ない自然・天然』(同)、『お母さんのための「食の安全」教室』(女子栄養大学出版部)など著書多数。
「ビジネスマナー」はなぜ、必要?そもそも「マナー」ってなに?
資料の提出、商談やミーティングなど、あらゆる場面において時間、期日は厳守しなければなりません。 どんなにスキルがあって優秀な人だと評価されていても、時間や期日が守れなければその評価が一瞬で揺らいでしまう程、ビジネスの場面においては重要な要素です。
また 万が一間に合わない場合は、遅れが想定された時点で迅速に報告しましょう。 間違っても、決められた時間、期日が過ぎるまで何の連絡もしないということがないように注意しましょう。
3.3. 公私混同はしない
仕事にプライベートの感情や物事を持ち込むことは避けなければなりません。 仕事とプライベートの境界線をきちんと意識し、公私混同は避けましょう。 例えば、仕事中に私用の連絡をしたり、仕事に関係のないサイトを閲覧したりすることは厳禁です。
3.4. 身だしなみに気を付ける
- 寝ぐせがないよう髪の毛を整え、奇抜なヘアカラーは避ける
- スーツやワイシャツはTPOや体形に合ったものを選び、アイロンやクリーニングでシワを伸ばしておく
- 靴を磨いておく
- 口臭、体臭ケアをおこない、過度な香水の使用は控える
- 爪が長くなりすぎないように、適度な長さを保つ
- 長すぎる髪は結ぶ
- ナチュラルなメイクを意識する
- 短すぎるスカート、高すぎるヒールはなるべく避ける
4. 仕事上のビジネスマナー
4.1. 言葉遣い・敬語
- 丁寧語:語尾が「です」「ます」の丁寧な表現
- 尊敬語:相手を立て、敬意を表す
- 謙譲語:自分をへりくだり、相手に敬意を表す
- 自分のことを指すときは、男女ともに「私」を使用
- 社外で社内の上司、同僚の話をするときは敬称を取る
例)「部長の田中が対応いたします」 - いません ⇒ おりません
- わかりません ⇒ わかりかねます
- やめてください ⇒ ご遠慮願います
- 申す(「言う」の謙譲語。上司や目上の人の発言を社外の人に伝える際に使う)
- お世話になっております(取引先など、社外の人に対する挨拶)
- お手数ですが(こちらから物事を依頼する際に添える枕詞)
- 恐れ入りますが(上司や取引先、お客様など、立場が上の人に対して添える枕詞)
- 承知いたしました(内容を理解したことを伝える言葉)
4.2. 電話対応
- 3コール以内に出る
- 電話を受けるのが遅くなった場合は「お待たせいたしました」と一言お詫びする
- 「もしもし」は使用しない
- ゆっくりと、はっきりした口調で話す
- 利き手とは逆の手で受話器をもち、メモを取れるようにする
- 電話を受けた場合は、先方が電話を切ってから自分の電話を切る
4.3. 名刺交換
- 名刺入れを準備し、すぐに名刺が出せるようにしておく
※1対1の場合は、目下の人から名刺を差し出すようにする - 自己紹介をする(社名、所属、役職、氏名の順)
※自社側が複数人いる場合は、立場が上の人から順番におこなう - 名刺を交換する
※交換の際は、名刺入れの上に名刺を重ねて両手で持ち、相手側に向けて差し出す
※相手が同時に名刺を出している場合は、相手よりも低い位置で差し出す
この時、名刺入れを左手でもち、名刺入れの上で相手の名刺を受け取る
自分の名刺は右手でそのまま差し出す - 「頂戴いたします」と挨拶をする 重要なポイントはたった一つ
- 着席後は、名刺入れの上に相手の名刺を乗せ、机の上に置いておく
4.4. 報・連・相(ほうれんそう)
4.4.1 報告
報告には、 仕事の進捗状況や結果報告、トラブルやミスなどの報告 があげられます。報告は迅速におこない、 5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、どのようにして)を意識して伝えると、相手も理解しやすくなります。
4.4.2 連絡
4.4.3 相談
5.第二新卒なら身につけておきたいビジネスマナーとは
一度社会人として働いたことがある第二新卒の場合、会社は「あらかじめ基本的なビジネスマナーが身についている」と見なします。ここからは、そんな 第二新卒だからこそ身につけておきたいワンランク上のビジネスマナー を紹介します。
5.1. 簡潔にわかりやすく話す
5.2. 席次の基本ルール
席次とは、会議室やエレベーター、車などでの座席の順番のことです。基本的に、 出入口から最も遠い場所が「上座」、最も近い場所が「下座」 と覚えておけば問題ありません。目上の人から順番に、上座についていきます。
5.3.メールの送り方
メールは、ビジネスにおいて必須ともいえるコミュニケーションツールです。 対面と同様、敬語を使用し、失礼のない言葉遣いを心がける必要があります。 単に文字を羅列するのではなく、文章が長くなる場合は適度に改行を入れたり、情報量が多い場合は箇条書きにしたりするなど、読み手に配慮した構成を心がけましょう。
6. まとめ
「ビジネスマナー」さえ身につけていれば契約が取れる、数字が上がる、出世ができるということはありません。しかし、 「ビジネスマナー」を身につけていないことで、契約が取れない、数字が上がらない、出世ができないということは十分あり得ます(仕事はできるが身だしなみが悪いので大切な商談に呼ばれない、提案の中身はいいが言葉遣いが悪いので採用されないなど)。 いま一度、自分自身の「ビジネスマナー」を見直してみましょう。
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